top of page
Background1.png

Post

隣人に薪をたくさん貰ったこと

2021年6月28日


この週末、隣の家のマイケルが「薪欲しくない?」と聞いてきたので、二つ返事で「イエス!」と答えたら、山のような薪を譲ってくれました。こんなうまい話は滅多にありません!



でも、どうして気前良く薪をくれたのかと言うと、マイケルの家ではもう薪ストーブは使わないことにしたからだそうです。「屋根のソーラーパネルは発電してくれるし、暖房だけでなくて夏はクーラーも使えるように、居間には省エネタイプのエアコンを導入したんだよ。それに薪を置いてあった物置もボロボロだし、作り直すことにしたんだ」と、マイケルは嬉しそうに言いました。だから、たくさん積んであった薪は邪魔になったと言うわけ。その薪は、以前の住民が残していったものですが、まだたくさん残っていたのです。マイケルたちは3、4年前に隣に引っ越してきたばかりですが、小さい子供が三人いて、ひっきりなし家のリノベーションをしています。しかもI T技術者のマイケルは、省エネできることは可能な限りやろうと言う考えです。


一方我が家としては、乾いていて、しかもすでに割ってある薪をこんなにたくさんもらえることなど滅多にないので、早速フェンス越しに薪を我が家に運び込みました。すぐに大きな薪の山が。これで向こう3、4年は薪が足りなくなることはないでしょう。ありがたや、ありがたや。



我が家のある、メルボルンから車で1時間もかかるベルグレーブの町は山間にあるので、まだ薪ストーブがある家が珍しくありません。古い家には大概あると言って良いでしょう。かつては暖房から食事の支度まで、全部薪だった時代もあります。しかし、そんな時代はとうに終わり、隣のマイケルのように、薪ストーブを廃止する家も増えて事情は変わりつつあります。


マイケルの家族のように、メルボルンのシティから1時間以上かかるこのあたりにも、小さな子供がいる、高学歴のホワイトカラー家庭がたくさん引っ越してきています。オーストラリアは未曾有の住宅バブルの渦中にあり、都市部の住宅の値段が高騰したので、ヤングファミリーはこぞって郊外の、さらにまたその外に住宅を求めて移動しているのです。


同時に、他国と同様オーストラリアも急速な脱炭素化を求められています。だから、新築の家にはほぼ必ずと言って良いくらいソーラーパネルが付けられています。それと入れ替わるように、一酸化炭素ガスをたくさん排出する薪ストーブの需要は減ってきているようです。


それでも、我が家もそうですが、まだ古い住宅には薪ストーブがついていて、先だっての大停電のような時は威力を発揮します。嵐になれば、そこらのユーカリの木が倒れるのは日常茶飯事ですから、どこかに倒木や廃材が落ちてないか目を光らせてさえいれば、お金を出して薪を買う必要もあまりありません。我が家も、お金を出して薪を買ったのはこの20年でたった一度きり。(買うとすごく高い!)そう考えてみれば、薪ストーブというのは究極の、サステナブルな暖房装置と言えなくもないですね。


そんなふうに、薪ストーブは良いものですが、たくさんの人がいっぺんに使うとどうなるかと言うと、実際に大気汚染が著しくひどくなります。私の住んでいるベルグレーブでは、冬の寒い朝など大気が湿って淀んでいる時に、そこらで一斉に薪ストーブを着火すると、町全体が煙の排ガスに沈んでいる状態になります。太陽が出て暖かくなる昼ごろまで、それが続きます。こうなると呼吸に疾患のある人は息苦しくなり、喘息の発作を起こす人もあると言います。


ソーラーパネルや風発電はもはや一般的になりつつあり、水素やその他のクリーンなリニューアブル・エネルギーもどんどん実用化になってきています。もちろん、それらには一長一短があり、賛否両論もあるでしょうが、隣のマイケルのように、数キロワットの発電力があるソーラーパネルと電力消費の低いエアコンを併用することは理にかなっているし、その方が薪ストーブよりずっと望ましい暖房器具なことは明白です。オーストラリアの都市部とその周辺に限って言えば、薪ストーブが必需品だった時代は確実に終わりつつあります。薪ストーブは必需品ではなく、もはや贅沢品であることは間違いありません。しかも温暖化を進めるネガティブな側面を持った贅沢品です。オーストラリアにあっても、メルボルンのような都市周辺で薪ストーブが使える日々はもう長くないのかもしれません。


そうは言っても、私は薪ストーブが大好き。赤外線と輻射熱による暖気は家を隅々まで温めてくれるし、ちろちろ燃える炎を眺めているのは気持ちが良いものです。火を少し落とせば、焼き芋だって上手に焼けます。


(タマの特等席)


だから私は、ちょっとした心の痛みも感じながらも、もうしばらくは薪ストーブを使い続けるでしょう。マイケルにもらった薪も、ちびちびと時間をかけて大事に使うつもりです。

 
 
 

Comments


bottom of page