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絵本の出版記念会へ

2021年4月18日

 

土曜日、友達の絵本作家Jackie Kerinの絵本The Amazing Case of Dr.Ward(Ford Street Publishing)の出版記念会があったので行ってきました。Jackie とは紙芝居を時々一緒にやっている仲間で、彼女はA K Aオーストラリア紙芝居協会というグループを立ち上げたストーリーテラーです。オーストラリアに紙芝居をやっている人なんているの?と思う人もあるかもしれませんが、実は結構たくさんいるのです。A K Aも会員が百名ほどになり、私もそのメンバーの一人。

 

そのJackieが何年か越しで作っていた絵本がようやく出来上がり、晴れて知人や友達を集めて出版記念会を行うことになりました。場所はシティの北のBrunswickという地域で、昔は庶民的な下町だった所ですが、今は若者やアーティストが集うメルボルンでも最もおしゃれな街です。出版記念会の会場はそこにあるMoss Upon a Time というギャラリースペースで行われました。

 


上半分がテラリアムになっている古いピアノ


行ってみると、会場ではテラリアムというガラスの鉢植えの作り方を実演していました。Moss Upon a Timeのモスとは苔のことで、行ってみて分かったのですが、ここはテラリアムを作って売っているお店でもあるのでした。Jackieの新しい絵本The Amazing Case of Dr.Wardは、150年程前に実在したウォード博士というオーストラリア人植物学者の生涯がモチーフの作品なので、このギャラリーはちょうどぴったりの場所と言えます。ウォード博士は、オーストラリアと英国の間で様々な植物を移植した人で、そのために「ウォード博士の移植箱」というものを発明したそうです。この移植箱ができたおかげで、船で遠くの国まで植物を運ぶことができるようになったのでした。この絵本のイラストはメルボルン在住のスワンナキットさんというタイ出身の絵描きさんが描いていて、植物のディテールがとても美しく描かれた絵本です。私も一冊買って早速サインしてもらいました。

 



ウォード博士の移植箱のレプリカ


出版記念会と言うと、作家がスピーチしたり、出版社の偉いさんが名刺を配ったり、有名作家が乾杯の音頭をとったりとか堅苦しいセレモニーのような感じがありますが、オーストラリアの、しかも絵本の出版記念会は、誕生パーティーのような気楽さで、まずはJackieがこの絵本の紙芝居を行い、その後はもう子供が走り回ったり、ギターやバイオリンを弾く人もあったりで、みんなお茶をのみ、ケーキを食べて、和やかな雰囲気でした。私も知り合いとしゃべったり、テラリアムをじっくり見たりして楽しい時を過ごしました。




 

私も、絵本を書いている人間の一人ですが、たまに絵本は何のためにあるんだろうと考えることがあります。それについては、いろいろなことが言えるでしょう。今日も帰りの電車の中でThe Amazing Case of Dr.Wardを開いて読んだ後に、改めてそんなことを考えました。私たちは、絵本を一冊読んでいる5分か10分の間、時空を飛び越えて、その世界に没頭することがあります。その時間とは、日常から離れた、とても不思議で楽しいひと時です。それは本当に短い時間なのですが、私たちの、ともすれば色あせ気味の日常に、素晴らしい色彩や味わい、そして深い奥行きを与えてくれる時間と言えるでしょう。もちろん絵本だけがそう言う力を持っているわけではありませんが、文学や音楽、あらゆる芸術には、そんな価値があると思います。

 

車窓からふと見上げると、メルボルンの街並みや空の色合いも、今日は、色濃く、美しく見えたのでした。





 
 
 

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