創作意欲とは?
- 鉄太 渡辺
- Sep 19, 2021
- 3 min read
2021年9月19日
十八歳の息子は12年生、日本で言ったら高校三年生です。先日、高校最後の美術制作に、「自動作画機」とでも呼んだら良い機械を作りました。

(自動作画機、Ringoro Watanabe©️)
この自動作画機は、壊れた自転車の車輪、ペットボトル、古い扇風機、水を汲み出す電気ポンプ、材木などを組み合わせて作った力作です。珍妙な仕組みになっていて、壊れた自転車の車輪から何本かのペットボトルがぶら下がっていて、その中に入っている絵具がぼたぼた垂れながら回って絵を描くというものです。自転車の車輪がくるくる回るので、ちょっと墨絵のような円形の抽象的な絵が描けるのです。車輪の周り方がスムーズではないので、絵具が滲むところなどが出てきて、なかなか味のある作品ができます。ろいろな色を使ったり、ペットボトルの代わりに筆を下げたり、木の枝を下げたりすれば、また違った趣の絵が描けます。

(作品例、Ringoro Watanabe©️)
この機械の面白いところは自転車の車輪がどうやって回るかです。からくりとしては、ポンプで吸い上げた水が扇風機のプロペラを回し、その回転が細い紐で自転車の車輪に伝わるようになっています。水、プロペラ、紐、自転車の車輪と、動力がいくつかの装置を介して伝わるうちにあちこちで摩擦がおき、不規則にしか車輪が回らないので、歪な円を描くように機械が動き、そのせいで何とも言えない妙な絵ができるわけです。

息子は、普通の絵も上手に描くのですが、 美術家の母親の制作をいつも横で見たり、時には手伝ったりしているので、こうした味のある、不思議な曲線を描いたりさせると、なかなかの腕を見せます。また、こういうおかしな機械を作るのも得意で、小さい時から僕が大工仕事をやっている横で、いろいろな物を作ってきました。
(上から、息子の作ったラジコンボート、ゴーカート、パチンコ)



うちの息子の特徴は、欠点なのか利点か分かりませんが、突然制作意欲が湧いていくるところにあります。それまで、卵で言えば孵化するまでが結構長くかかります。でも、その意欲が湧いてくると、猛烈な勢いで制作を始め、終わるまでストップできなくなります。この自動作画機もたった二日で作ってしまいました。12年間の集大成を二日で作るのもどうかと思いますが、締め切りギリギリまで待ち、インスピレーションが泉のように湧き出てくると、一気呵成に作り上げるのです。
私も、文章を書いたりする仕事をしているで、創作意欲をいかに奮い立たせるかについてかなり真剣に考えてきました。そのために、時には長い旅行をしたり、たくさんの本を読んだり、 意欲を出すためにかなりの時間とお金を費やしてきました。だから、息子のこの爆発的な創造性、創作意欲の噴出がとても羨ましく思えます。
制作意欲とは、すなわち生命力が表現力をまとったものなのかもしれません。

(製作中の息子)
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