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伊東で暮らした最初の3ヶ月

Updated: Feb 18

2025/01/02


9月から12月頭まで、伊東で3ヶ月暮らして、メルボルンに帰った。その間ずっと伊東にいたわけではないが、通算で70日以上は伊東にいたことになる。4月に家を買って一旦メルボルンに戻り、9月にまたやってきて3ヶ月を過ごしたから、ちょっとは伊東暮らしにも慣れた。 


今回伊東では、市内や周辺をあちこち歩いたが、そうしているうちに友達が5、6人できた。70日間滞在して5、6人友達ができたと言うのが多いのか少ないのか分からない。小学校の転校生だったらもっとたくさんできただろうが、どこにも所属してない62歳のおっさんとしてはマシな方かもしれない。現に、うちの女房は「上出来よ」と言った。



最初にできた友達は、当然と言えば当然だが、家を見つけて買うまで一連の世話を焼いてくれた不動産屋のHさんだ。彼はまだ30代の若い人だが、Oハウンジングの若頭として、バリバリ仕事をしている。Hさんは徳島の出身だが、縁があって伊東にやってきたのだと言う。家を買った後も、エアコンの修理や内装のリノベなんかについて相談に乗ってくれて、何かと世話を焼いてくれている。伊東の隅々のことを知っているから、とても頼りになる。すぐ近所に住んでいるから、何かあればすっ飛んできてくれるし、メルボルンにいる間も安心だ。伊東のように小さい街だからこそ、こんなに親切にしてもらえるのかもしれない。Hさんから見れば、私は顧客の一人なのかもしれないが、近所の飯屋で夕食を一緒に食べながら飼い猫の自慢大会をしたりしていると、私としては年下の友達と思えてくる。



その次にできた友達は、竹の台の我が家のすぐ下で食堂をやっていたFさん夫婦だ。今年の5月で食堂は止めて駄菓子屋に商売替えしたが、昨年と今年の4月に滞在した時はまだ食堂をやっていたから、何度か食べにいくうち顔見知りになった。家を買った初期は冷蔵庫もなかったから、毎日外食だったのだ。Fさんの駄菓子屋は私の通り道にあるから、二日に一度くらいは店先で話し込むようになった。二人とも80代だが、とても若々しくて、いつも仲良く店番をしている。奥さんは生まれも育ちも伊東だから町のことをよく知っていて、伊東の昔話なんかをしてくれる。ご主人は神奈川出身だそうだが、50年もここで喫茶店や食堂をやっていたから、街の移り変わりのことなんかを面白おかしく話してくれる。昔は伊東にもヤクザがたくさんいたそうで、そのナントカ組の話なんかさせると止まらない。「俺の喫茶店に、チンピラがシャツも着ないで背中の彫り物丸出しでやってきやがるから、『店に来るときはシャツくらい着て来い』って言ってやったんだよ。そしたら、次からちゃんとシャツを着てくるようになったから、あの頃のヤクザは道理が分かっていたんだなぁ」とか、「ヤクザは何か失敗をやらかすと、お詫びに指を詰めるんだ。こうやって電信柱に小指を当てて、出刃で『えいっ!』て切っちゃうんだ。でも、後でちゃんと医者で切った後を消毒して縫ってもらうんだ。そんなことは、しょっちゅうだったっけね」とか、そういう類の話だ。


Tさんのカフェの庭
Tさんのカフェの庭


川奈のTさんとも友達になった。Tさんは不動産屋のHさんの紹介だ。Tさんは、ヨーロッパに30年近く住んでいた元カメラマンで、今は川奈の集落の古民家に暮らし、平日は造園業をやって、週末はカフェのマスターをやっている。そのカフェがなかなか素敵なので大いに宣伝したいのだが、S N Sには載せたくないという意向なので、ここには詳しいことは書かない。


川奈の小道
川奈の小道

興味のある人は、川奈の漁村の中の小道(車は通れない)を浜の方から上がっていくと、集落の中ほどにある。伊豆急の川奈駅からも歩いて15分くらいだろう。美味しいコーヒーと、うどんやそば、豚鍋定食なんかを出す。Tさんが一年かけて整備した庭の造作もなかなか面白い。こんなことを書いて申し訳ないが、車も入れない場所で静かだし、他にあまりお客も来ないから、ついTさんとの四方山話に夢中になって、いつも長っ尻になってしまう。



それから、友達というほどではないが、川奈からさらにもう数キロ、下田寄りにある富戸(ふと)という集落で、絵本カフェをやっている若いご夫婦とも顔見知りになった。ここはインスタで宣伝しているから名前を出してしまうが、Periという名前の絵本カフェだ。https://www.instagram.com/peribook_cake/ 富戸も川奈と同じくらい小さな集落だが、海から向かって集落の左端の方の道をちょっと上がったところにこの絵本カフェがある。集落に一軒だけあるスーパーのすぐ裏だ。ここも「こんなところに?」と思うような場所だが、週末など順番待ちをしないと入れないくらいの繁盛だ。絵本が7000冊もあって、それはオーナーの奥さんの亡くなったお母様が集めていた絵本だそうだ。ここの売り物は奥さんが作るケーキだ。いつも5、6種類あるが、どれも飛ぶように売れている。それから、ご主人と奥さんが二人して力を合わせてリノベした店内の造作も面白い。素人技とは思えないほど丁寧な作りだ。店の前には駐車場もちゃんとあるから、車で行くのが便利かもしれないが、伊豆急線の富戸駅からも歩いて15分で行ける。



うちの隣の住人のKさんとも顔見知りになった。隣だから引っ越しの挨拶に行ったのだが、しばらくしてフランス料理をご馳走になった。そのフランス料理のレストランは、山の上の方の吉田という辺りにあって、熱海の有名ホテルのシェフが趣味でやっているのだそうだ。「隠れ家」的な店で一日ひと組しかお客を取らない。こういうところで食べたのは私は初めてだった。食通らしいKさんは、いろいろな店を知っているようだった。それもそのはず、Kさんは元々酒屋さんだったから、飲食店にも詳しいのだろう。Kさんには、伊東の美味しい干物屋とか美味しいワカメを売っているスーパーなども教えてもらった。



こうやって伊東にできた新しい友達のことを書いていると、昔メルボルンに引っ越した頃できた友達のことを思い出す。二軒長屋の隣の住人だった水道屋のアーニーとフェイ夫婦、お向かいのシングルマザーのサンディー、娘の保育園で知り合った母親のティナ。どこかに引っ越すと、その土地の風土や自然と同じくらい新しくできた友達ことが記憶に焼き付く。



だから伊東にしばらく住んでみた印象で、まず初めに書きたくなったのは、知り合った人たちのことだった。

 
 
 

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