メルボルンに3ヶ月ぶりに帰ってしたこと
- 鉄太 渡辺
- Jan 9
- 6 min read
2025/01/10

9月頭から12月頭まで伊東に滞在した後、シンガポールで1週間寄り道してから3ヶ月ぶりにメルボルンに帰った。だから、家族とも3ヶ月ぶりに会ったということだ。伊東での最後の1ヶ月は、さすがに一人だと何となく寂しくなって、夜などは手持ち無沙汰なことなんかもあった。だからメルボルンに帰れて嬉しかった。

でも、帰ったら帰ったで忙しくなった。私じゃないとできないことや、頼んでもなかなかやっておいてくれなかったことがあるからだ。庭の草刈りは、息子が暇をみて2、3度やってくれたが、こう言っちゃ悪いが、かなり虎刈りだった。その上、この時期は(毎年のことだが)、娘の誕生日(12月18日)とクリスマスとお正月が続いてやってくるから、座っている暇も
なかった。

飼い猫タマ(18歳)が帰りを待っていてくれたこと
家族に会えたのも嬉しかったが、飼い猫のタマに再会できたのがとても嬉しかった。タマは10月末に食事を全然しなくなってガリガリに痩せ細り、獣医に連れていったら膵臓癌であと2週間の余命という宣告だった。もちろん家族は大ショックだった。遠く伊東でそのニュースを受け取った私としては、当事者(猫?)のタマもかわいそうだったが、家族の悲しみを想像するのが一番辛かった。22歳の息子はちょうどその頃友達とキャンプに行く予定だったが、行く前にいざという場合に備えて、庭にタマの墓穴を掘ってから出かけた。私もペットを葬る墓穴を何度か掘ったことがあるが、それは全く気持ちの良いことではない。息子には初めてのことだし、幼い頃から一緒だったタマの墓を掘るのは辛かっただろう。12月半ばには、家族でシンガポール旅行をする予定だったが、妻のチャコは自分だけキャンセルして、タマを看取るために家に残った。

ところがタマは、健気にも私の帰りを待っていた。余命宣告から1ヶ月が経った12月18日、私がメルボルンの自宅に帰り着くと、ガリガリに痩せたタマはよろよろと私を出迎えてくれた。その姿を見たら胸がいっぱいになった。ところが、その頃から少しずつタマは元気になって、少しだけだが食事をとれるようになった。それからさらに1ヶ月経った今も、私たちと一緒に暮らしている。以前と同様、寝るときは、私の布団の足元に乗ってくる。私が何かを食べていると、嬉しそうにすっ飛んできて「あたしにもちょうだい!」とばかりスリスリする。夕食にすき焼きなどすれば私の横に座り、牛肉をちょびちょび食べたりもする。動物の生命力はすごい。タマの余命があとどれくらいか分からないが、うんと可愛がって、思いきり甘やかせてやりたい。
下水の問題
11月の終わりごろだったか、伊東の私に妻から連絡があって、台所の下水が詰まっていると言う。そこで、うちに帰っていきなり下水掃除にとりかかったが、下水管はちっとも詰まっていなかった。不思議に思って原因を探したら、我が家の下水を本管に押し出すための電気ポンプが動いていなかったのだ。だから、水道会社に電話したらすぐに見に来てくれた。そしたらポンプ自体ではなくて、我が家の電気のブレーカーが落ちていただけだった。スイッチを入れ直したらポンプが動き、下水もちゃんと流れた。
でも、どうしてブレーカーが落ちたかというと、11月末にはメルボルンに大雨が降ったことがあって、その時に我が家は停電してブレーカーが落ちていたのだった。だから、下水のポンプは2週間以上動いていなかったことになる。なんてこったい!
雨漏りの原因を突き止めたこと
その11月末の大雨の際には、以前から雨漏りしていた薪ストーブの煙突周りからも雨が漏ったという報告もあった。それも、メルボルンに帰ったら行う修理のリストに加えられた。

そして、私が帰った後にも2度雨が降ったのだが、その度にやっぱり雨漏りした。そこで、今度こそ原因を究明しようと考えたのだが、一回目の雨降りの時には、どこから漏れているのか皆目分からなかった。きっと、外の雨樋があふれて、そこから屋根の下に逆流して薪ストーブのところから漏れるのだと思っていた。ところが、最初の雨の最中に調べたが、雨樋が原因ではなかった。
それではと、次の雨まで原因究明を待つことになった。2週間ほどしてまた雨が降り、今度は雨が降っている最中に薪ストーブの煙突の、金属製の覆いを外してみた。その穴から覗くと、屋根の裏側が見える。懐中電灯を照らしてみたら、ほんの米粒くらいの穴が屋根のトタンが錆びたところに開いていて、その穴からポタポタ水が滴っているのだった。ポタポタ漏れているだけなのだが、下には大きな水溜まりができるのだから、雨漏りは放っておけない。
とにかく、ようやく雨漏りの原因が究明できたので、「この野郎、ついに見つけたぞ!」と叫んでしまった。だがそう叫んでみて、雨漏りがどうして「この野郎」と擬人化されるのか自分でも不思議だった。
そして翌日、雨が上がったので屋根に登り、その米粒ほどの穴の周りの錆を落としてからシリコンをたっぷり塗りつけて穴を塞いだ。だから今は、次に雨が降って、果たして雨漏りが直ったのか確認する機会を待っている。
疲れと脱水症状
そうこうしているうちに、オーストラリアに帰国して1ヶ月が経とうとしている。日本に行っていた3ヶ月間に溜まった用事も次々と片付き、いつものメルボルン生活にほぼ戻った。ところが昨日の朝起きてみると、頭が痛くて体が動かない。風邪をひいたかなと思ったが、熱もないし、咳も出ないし、関節が痛む訳でもない。とにかく、頭痛がして何もする気力が湧かない。大好きなコーヒーを淹れて飲んだが、胃がムカムカしてコップに半分も飲めない。おそらく、急に冬の日本から夏のメルボルンに戻ってきて、脱水症状になったのかもしれない。
そこで丸一日何もしないことにして、水をガボガボたくさん飲んで、頭痛薬を飲んで、小説本を読みながら過ごした。そしたら、夕方にはほぼ元気になって、夕食はちゃんと食べられるようになった。
やっぱり脱水症状だったのだと思うが、きっと帰国してから正月にかけて溜まった疲れのツケが溜まって出てきたと言うこともあるだろう。来週は、かかりつけの医者に行く用事もあるから、こんなことがあったことも報告しようと思う。

花咲く庭のタマ
夏の我が家の庭には、花が咲き誇っている。これは私の留守中に妻のチャコが丹精した結果だ。その花畑に埋もれるようにして、背中を丸めた猫のタマが日向ぼっこをしている。タマは、きっと自分だけのためにチャコママがたくさん花を植えてくれたんだろうと思っているに違いない。タマには、庭のあちこちにお気に入りの場所があって、外が涼しい午前中は、それらの場所をあちこち移動して日向ぼっこを楽しんでいる。そういう庭のタマは、もうすでに天国にいるようなものだ。だからきっと近い将来、本当に天国に行ってもあまり何も変わらないから、自分が死んだことですら気がつかないかもしれない。そう考えると、病気のタマを見ている気持ちも、かなり和らいでくる。

たかだかペットの生き様なのだが、私もこれから残りの人生をどうやって生きていったら良いのか、少しタマに教わったような気がする。タマは、そんなことを伝えたいがために、私の帰りを待っていてくれたのかもしれない。何だか、そんな気がしてならない。
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