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カウラまで (1回目)

2021年5月7日


ニューサウスウェールズ州のカウラという町まで行ってきました。カウラはメルボルンから真北に700キロほど、車で9時間。シドニーからも西へ300キロ、4時間かかります。


 

(Yarra Valley)


カウラは人口1万人ほどの田舎町で、行ったのは初めてです。そこまで行った理由は、カウラにある日本庭園で行われる紅葉祭りに招かれ、5月5日「こどもの日」に紙芝居をすることになったからです。私は「オーストラリア紙芝居協会」というグループに属していて、時々学校や図書館に招かれて紙芝居をすることがあります。今回は、地元の子どもたちに英語で紙芝居を行って欲しいという依頼でした。

 

カウラにどうして日本庭園があるかと言うと、ここには第二次対戦中に戦争捕虜の収容所があった場所で、日本やイタリアの捕虜が入っていたことに縁があるからです。1944年8月5日、収容所から日本兵捕虜が集団脱走を試み、230名余りが命を落としたという悲しい歴史があります。その230名はカウラに埋葬されましたが、戦後もカウラのオーストラリア在郷軍人会が墓地の管理を引き受けてくださり、丁寧に慰霊してくださっていました。そのことを感謝して、1979年日本政府と日本の民間企業がカウラに日本庭園を作って寄贈したのだそうです。カウラの日本庭園は広さが12エーカーもあり、南半球最大の規模を誇るそうです。

(カウラの日本兵集団脱走事件については、https://ja.wikipedia.org/wiki/カウラ事件

さらに詳しくは、中野不二夫著『カウラの突撃ラッパ:零戦パイロットはなぜ死んだか』(文春文庫)を参照のこと)。

 

コロナになってからほとんど遠方へ出かけていなくてうずうずしていたので、渡に舟とばかり出かけることにしました。幸いオーストラリアは現在コロナの感染者も少なく移動規制も少ないので、行かない手はありません。700キロは、丸一日かけてドライブすれば走れない距離ではありませんが、うちの奥さんが「しばらく長距離は走ってないんだから無理しない方が良い」と言うので、急遽途中ワンガラッタで一泊することに。ワンガラッタはビクトリア州北部の町です。

 

日曜午後に出発。ワンガラッタまで300キロ、およそ4時間。メルボルンの東外れにある我が家を出るとそこはワインの産地で有名なヤラバレー。ヤラバレーを過ぎると、カスケード山脈を右に見ながら美しい渓谷を縫うように走ります。



 走りながらC Dを聞きます。先日、近所のマーケットの中古のレコード屋で古いCDを2枚買いました。一枚はジョンレノン『シェーブドフィッシュ』。もう一枚は、サイモンとガーファンクルの『ブックエンド』。まずはレノンから。ボリュームを上げると、気分は最高に70年代!ジョンレノンの絶叫のような反戦歌を聴いていると、あの頃のロックシンガーのパワーに圧倒されます。レノンは特別かもしれませんが、ディストーションの効いたギターをバリバリ弾きながら絶叫する、そんなストレートなエネルギーがすごい。サイモンとガーファンクルの方はさらに古くて、60年代のアルバム。50年以上も前のアルバムなのに、音の美しさには驚きます。多重録音を生かして人の会話やラジオ放送などの効果音も曲に重ねて録音してあり、アコースティックギターの音色も繊細で、まるですぐ目の前でポールサイモンが弾いているように聞こえます。


 

まるでコンサートを聴いているような気分で車を飛ばしていると、渓谷の景色に夕闇が迫ってきました。道路はやがて4車線のヒュームハイウェーに合流し、真っ暗になる頃にワンガラッタに。モーテルにチェックインし、荷物を下ろしてコーヒーを一杯。


 

さて、夕食。正直、一人旅は夕食があまり楽しくありません。アルコールを3年前にやめてから、土地のワインや地ビールを一杯という楽しみもなくなったし。オーストラリアの食べ物には、日本のように地方色があまりないので、食べ歩きの楽しみもあまりないし。

 

ワンガラッタの目抜き通りは、日曜の夜なので人出はほぼゼロ。どうにかタイ料理店の明かりが暗い街角にあり、がらんとした店内には私のような一人旅らしい男性客がちらほら。ここに入ってタイ風ビーフサラダを注文しました。

 

ところが、これがひどかった。待つこと10分。想像していたのとは全く異なる趣のタイ風ビーフサラダが登場。ぶつ切りレタスの上に、薄切り牛肉とトマトと玉ネギを炒めた野菜炒めがのっています。一口食べてみると、野菜炒めは本当に炒めたのかどうか疑ってしまうような温さ、というより冷たさ。サラダだから?味はニョクマム風味ですが、線香のような異様な香りが…。最悪なのは、砂糖が大さじいっぱいは入っているしつこい甘さ。

 

三口ほど食べてギブアップ。とてもそれ以上は無理。オーストラリアで外食すると、たまにこう言う「大外れ」があります。本当はタイ料理が好きなんですが、当分は食べる気がしないくらいのトラウマ、心の傷を受けました。

 

情けない気持ちで店を出ましたが、お腹はまだいっぱいになっていません。仕方なくKFCでフライドチキンを買い、モーテルへ帰還。iPadで映画を見ながら食べました。あーあ、最初からK F Cにすればよかった。

 

というわけで、翌日のカウラまでの400キロ強のドライブに備えて早寝しました。

 

(続く)

 
 
 

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